エッセイ 第2回 ティピの教え 文/北山耕平

第2回 ティピの教え

文/北山耕平
  • Section 04ティピ・ライフの知恵
 ティピを暮らしに生かす心得としてネイティヴ・アメリカンの、とりわけ平原インディアンの伝統的な倫理というものを、『インター・トライバル・タイムズ』という新聞に掲載されたティピ・ライフの知恵として、以下にわかりやすく翻訳し、書き残しておきますので参考にしてください。

常に相手を思いやり、尊敬の念を持って接すること。相手がお年寄りであれ、子どもであれ。

相手がエルダーであったり、両親であったり、先生や共同体の指導者である場合、さらに一層尊敬の念をこめること。

言葉や行為で、相手を打ちのめしてはいけない。死に至る毒物を避けること。誰かのこころを傷つけない。

誰かの持ち物に、絶対に触れたりしないこと。相手の許可を得たり、あなたとそのもののつながりが理解されるまでは、他人の持ち物に手で触れることは避けるべし。特にそれが「聖なるもの」である場合は、なおさら。

すべての人のプライバシーを大切にすべし。ある人の静寂の時に進入したり、個人的な空間のなかに踏み込んだりしないこと。

話をしている人たちの間に、割って入ることは許されない。会話する人たちの話を遮るような真似はしてはならない。

お年寄りや、初めて会う人や、特別な配慮が必要な人の前に出るときは、声を荒げるべからず。話すときには穏やかに。

エルダーが参加する集まりにおいては、求められない限り、自分から話を切り出してはならない。

面と向かってであれ、影に隠れてであれ、相手が誰であれ、特定の人物の悪口を口にするべからず。

地球とその表れのすべての相を、実の母親として扱うこと。鉱物、植物、動物それぞれの世界に対し、深い尊敬の念を持ちなさい。

空気や土壌を汚染するようなことは、なんであれしてはならない。もし誰かがわれわれの母親である地球を破壊しようとしたら、彼女を守るために、知恵を持ってたちあがること。

他人の信仰や宗教に、いつでも深い尊敬の念を持つこと。

他人の話すことに真剣に耳を傾けなさい。たとえその話の中身が自分にとってまったく意味のないものであっても、話はこころで聞きなさい。

 以上です。
 さあこれから秋。8月の後半に入ると、ときおり秋の風が吹きはじめます。収穫月を迎え9月になると秋分の日が来てもの皆熟れる月となり、夜が長くなります。あなたがものごとを深く考えるとき、そこに一張りのティピがありますように。
ティピの内部は特別な空間。※写真はイメージです
北山耕平(きたやま・こうへい) 1949年、神奈川県生まれ。
編集者、作家、翻訳家。日本のアウトドアライフやカウンターカルチャーの草分け的存在。現在も、環太平洋の先住民族とその精神世界や文化全般の研究・紹介を精力的に行っている。著書に、『地球のレッスン』『虹の戦士』(太田出版)、『自然のレッスン』(ちくま文庫)、『ネイティブ・マインド』(サンマーク文庫)ほか多数。
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